チタン(チタニウム)とは、銀白色の金属元素。ブラジル、オーストラリアなどを産地とするチタン鉄鉱、ルチル、クサビ石などの中に酸化物として存在しています。
 鉱物中に初めてチタンを発見したのは、イギリスのウィリアム・グレガー牧師。今から200年以上前、1791年のことでした。その後1795年にドイツの化学者マルティン・クラプロートが、ルチルの中に同じ元素を発見しチタンと命名。
 その名はギリシャ神話の巨人タイタンに由来するといいます。
 古い物語があるチタンですが、鉱物の中から金属のかたちで取り出されたのは1910年になってから。軽くて丈夫で錆びないことから、多くの可能性を秘めた夢の最先端金属として飛行機やゴルフクラブ、人口骨など幅広く利用されるようになりました。
 チタンが本格的な実用化を迎えたのは1948年以降。ルクセンブルクの治金学者クロール博士が、クロール法を考案してからのことでした。チタンの製法として最も一般的なクロール法は、チタン鉱石(主にルチル)の中の酸化チタンを塩素ガスと反応させることにより四塩化チタンとしたのち、マグネシウムを還元することによって金属チタンをつくり出す方法。90年代に工業的な開発が進み、チタンは実用金属としては鉄、アルミニウム、マグネシウムに次いで多い金属となっています。
 チタンが夢の最先端金属と言われるのには、さまざまな理由があります。まず1つは、銅や鉄などより軽いうえに強度が高いこと。アルミニウムと比べると比強度は約3倍です。2つめは塩分によっても錆びず、特に海水中では白金に匹敵する耐食性をしめすこと。深海6500mを行く潜水艦に、チタンが利用されているのもうなずけますね。
 熱に強く、約1670℃にならないと溶けないのも大きな特徴。熱の伝わり方はステンレスと同じくらいですが、重さはステンレスの約半分と扱いやすいため、身近なところでは中華鍋などにも使われています。
 チタンは比重が4.51で銅の約半分、鉄の約60%と軽量で、耐熱性や耐食性にも優れている他、金属合金として用途が広いのが特徴です。チタン鉱石は無尽蔵と言われております。強くて軽くて錆びないことから航空宇宙産業、科学工業、電力開発、海洋開発などに多用されています。
 今からおよそ50年前チタンの製法が考案されてから、工業的に飛躍的な発展を遂げている金属なのです。
■チタンと各種金属の特性
純チタン
(TP340)
チタン
(Ti-6AI-4V)
普通鋼
SPCC)
ステンレス鋼
(SUS304)
アルミ合金
(A5052P)
マグネシウム
(SUS304)

(C1020-0)
物性値 溶融点(℃) 1,668 1,540〜1,650 1,530 1,400〜1,427 593〜649 630 1,083
密度(g/cm) 4.51 4.43 7.86 7.90 2.80 1.77 8.93
熱伝導率(w/m・K) 17.0 7.5 60.4 16.0 137.0 159.0 385.0
電気伝導率(%対Cu) 3.1 1.0 17.2 2.4 35.0 40.0 100.0
ヤング率(GPa) 106.3 113.2 192.1 199.9 73.2 44.8 107.8
材質 耐力(N/ml) 277 909 179 206 101 200 69
引張強さ(N/ml) 393 999 315 588 212 250 213
伸び(%) 38 18 48 59 24 22 55
硬さ(Hv) 140 310 126 174 60 190 50

 チタンはイオン化せず人体に無害で生体適合性に優れていることから人に優しい金属とも言われています。
数多くの工業製品のほか、人工骨や人工歯根、心臓のペースメーカーなど医療用具の材料としても注目を集めているのはこのためです。なかでも金属アレルギーを起こさないことはよく知られていています。最近では、さまざまな美しい色に変化する特性からアクセサリーなどにも多く利用されています。

 厚生労働省の調査によると、アクセサリーによるアレルギー性接触性皮膚炎の原因の約80%が金属だと報告されています。正確に言うと金属そのものは皮膚炎を起こしませんが、汗や唾液・体液で溶け出した金属イオンが血液に入ってアレルゲンとなり炎症を起こします。特にピアスの場合は、耳たぶに穴を空けて通しますから、金属が直接皮下組織と接触するため炎症を起こす可能性が高まります。
 チタンは汗や唾液・体液に極めて溶けにくい性質があるので、アレルギーを起こす心配も少ないというわけです。アレルギーを起こさない優良な金属として皮膚科の専門医にも推奨されています。
 チタンを使った製品は、ほかにも私たちの身近にたくさんあります。
例えば、
食器。塩分や酢によっても錆びません。又イオン化しないので器に使っても食材の味が変わらないのです。ほかの金属よりも軽いというメリットを生かして、持ち運びが便利なアウトドア用の食器などにも広く応用されております。
軽くて丈夫で汗をかいても肌のかぶれを起こさないから、チタンはメガネフレームにも最適。装身具としてはアウトドア向け腕時計なども開発されていて、皮膚科の専門医から高い評価を得ています。
建材では海水でも錆びないことから、福岡ドームの屋根、有明の東京ビックサイト、東京湾横断道路の橋脚を守る橋脚カバーなどに使われております。
 軽くて強い性質のチタンですが、高強度でありながらしなやかな新チタン系合金が近年開発されてから、メガネメーカーの需要が高まっています。
 また、加工が難しいチタン合金の精密切断ができるウォータージェット切断機の開発など、チタンをとりまく製造環境も大きな広がりをみせています。
ページトップへ